「兜釜蒸留」見学体験記
みなさんこんにちは。
普段は博多駅店にてドヤ顔かましております。
もちろん無意識です。ドヤこと山口と申します。
最近は少し暖かくなってきて、いよいよ春到来って感じですね~。
皆さんはいかがお過ごしでしょうか?
僕はもっぱらお家で1人映画鑑賞派です。
そんなことはさておき。
突然ですが先日、私山口、大和一酒造元にお邪魔してきました!
大和一酒造元とは、熊本県は人吉市にある明治時代から続く大変歴史ある焼酎蔵です。
ところで人吉といえば、そう「球磨焼酎」の生産地として有名ですね。
ちなみに「球磨焼酎」とは、特に米のみを原料として、人吉球磨の地下水で仕込んだモロミを、人吉球磨で蒸留して瓶詰めしたものを言うそうです。
現在、球磨焼酎を醸す蔵元は全部で28蔵にのぼります。
こちらの大和一酒造元もその「球磨焼酎」蔵の一つというわけですが、そんな大和一酒造元のなかでも、特に個性的な焼酎があります。
ズバリ「明治波濤歌」
ラベルを見てみると、
どんぶり仕込み???
兜釜蒸留???????
聞き慣れない言葉のオンパレード…
まったくもってサッパリです。
そこで今回はこの「明治波濤歌」の謎に迫っていきたいと思います。
ということでやってきました。
まずは命名の由来からです。
お察しの方もおられるかもしれませんが、こちらの銘柄名は、主に昭和に活躍した作家山田風太郎の小説「明治波濤歌」から名付けられました。
こちらの小説は、明治という激動の時代において「波濤(ナミ)」を超えて、「海の向こう側」と関わりを持った人々の物語を綴った中編小説です。
本の初めにこんな一節があります。
“波濤(ナミ)は運び来り
波濤(ナミ)は運び去る
明治の歌…“
激動の時代において、「新たに日本にもたらされたもの」と「反対に失われたもの」が表現されているともとれる一節です。
そしてそれは「球磨焼酎」にも当てはまることでした。
というのも現代の球磨焼酎の造り方と、明治、またそれ以前の球磨焼酎の造り方には大きな違いがあります。
「球磨焼酎」にも合理化の波濤(ナミ)が訪れたわけです。
そこで立ち上がったのが、下田さん。
というわけ。
なんと下田さん、今はもう忘れ去られてしまった「伝統的な球磨焼酎造り」を過去の文献などを頼りに、再現してしまいました。
「真の球磨焼酎」の復活と言っても過言ではありません。
それが「明治波濤歌」。
う~ん、それだけでグッときますね。
明治と現在の焼酎造りで、何が違うかというと。
※明治→現代(主に)
原料:玄米→白米
麹:黄麹→白麹
仕込み方法:どんぶり仕込み→二次仕込み
容器:木桶→タンク
蒸留:兜釜蒸留→蒸気加熱・蛇管冷却
時代の変化とともに、より効率的な方法に進化していきました。
下田さんは、昔ながらの非常に手間のかかっていたやり方にもヒントがあるのではないかと考え、途絶えかけていた技術を復活させたわけです。かっこよすぎます。
一通り説明していただいた後は、そんなかっこよすぎる下田さん直々のご案内で蔵見学させていただきました。
こじんまりとして、温かい雰囲気です。
特徴的なのは、壁一面に飾られた絵画の数々。
下田さんのお父様の趣味だそうです。お父様もこれまたクールです。
こちらは麹室。なんと石造り、これも渋いです。
高湿度の室内で麹菌を米に繁殖させて、酒造りにはかかせない米こうじを造っていきます。
こちらが完成した米こうじ。
試しに食べてみると、麹菌がすこしフワフワとした舌触りに、しっかり酸味が効いています。貴重な体験です。
こちらはなんと、蔵に湧いている温泉水です。
大和一酒造元では、こちらの温泉水を使って焼酎造りを行っています。
弱アルカリ性で、超軟水。甘みもしっかりあり、水だけで十分ごちそうです。
美味い水、こちらも酒造りにはかかせない要素です。
このつぶつぶの山が明治波濤歌のモロミです。
白米ではなく玄米を使用しているので、少し黒っぽく、よく水を含んでふっくらしています。
側面に目をやると、こんな感じで分離しているのがわかります。
この状態が、だいたい30日目ぐらいだそうです。
いよいよ蒸留の準備です。
まず、余分な酸を除去する為に木炭の粉末を加えます。
少し混ぜ混ぜ。
次に籾殻をどっさり投入します。
そしてさらに混ぜ混ぜ。
こちらは後ほどの蒸留の際に役に立ちます。
ある程度かき混ぜたら、ザルでこします。
ザルでこしきれなかった分は後ほど圧縮して搾ります。
明治波濤歌で使用している「兜釜蒸留機」では、こうしてモロミを個体と液体に分けて蒸留します。
こちらは一般的な蒸留機では見られない、大きな特徴です。
さあ待ちに待った蒸留の瞬間…
いよいよ「兜釜蒸留機」の出番です!
まずは大釜にモロミ(液体)を投入。まだこの時点では、茶色に濁った液体です。
ところで搾り粕は捨てちゃうの??
と思ったそこのあなた。
安心してください、まだまだ現役です。
ということでお次は、その搾り粕に、さらに籾殻を追加です。
触ってみると、感触はふわふわ。袋に詰めたらいい枕になりそう…
よく眠れそうです。
そうしてふわふわになった搾り粕で釜に蓋をします。
その上から桶を被せて、竹筒を通して、最後に蓋をします。
この蓋が兜をひっくり返したような形をしていることから「兜釜蒸留機」と呼ばれているそうです。
ちなみに構造はこんな感じ。
さあ蓋の上に冷却用の水を貯めて、薪に点火します。
あとは直火でガンガン沸騰させること、約30分。
竹筒の先から蒸気が吹き出します。
そして、ついに!
ついに!!!!
感動の瞬間です。
これが、明治波濤歌のハナタレです!
この時点ではなんと度数約70度!
玄米由来の甘く、若干香ばしい重厚な香りが漂います。
こうなると明治波濤歌への愛が止まりません。
愛が冷めないうちに、試飲会です!(ワクワク)
まずは、オンザロックでいただきます。
なんとも爽快。
雫の滴る音を聞きながら…
なんと贅沢なひと時。
さあどんどんいきます。
お次は地元の伝統的な酒器「ガラ」と「チョク」で。
お燗でいただきまます。
直火でガンガン燗つけます。
さらにこちらは下田さんが独自に改良して、飲み頃になると絵柄の色が変わるという優れものです。
う、ううう、うう、うま…い…
しっかりとした甘味がさらに引き立ち、なんともまろやか。
ちなみにこちらが地元の伝統的な飲み方だそうです。
美味すぎる。これは完全にダメなやつです。
こちらの「チョク」通常のお猪口より一回り小さく、グイグイいっちゃいます。止まりません。
最後は、燗ロック!!
あまり馴染みのない飲み方ですが、その名の通り一度燗つけたお酒を氷を入れたグラスに注ぎます。
私、感動しました。
ロックの爽快さ、燗のどっしり重厚な甘味とまろやかな舌触り。
まさにいいとこ取り。
まだお試しでない方、試す価値アリです。
明治波濤歌、様々な顔を見せてくれますなぁ。
こちらの「明治波濤歌」本店・博多駅店でも絶賛販売中です。
もちろん博多駅店の角打でも、ご提供中ですので、ぜひお好みの飲み方でゆっくり、じっくりとご堪能くださいませ。
最後に。
下田さん並びに大和一酒造元のスタッフの方々、まさに明治波濤歌のように濃厚な時間をありがとうございました!
それでは、本日もスタッフ一同、皆様のご来店をお待ちしております♪♪
それでは。
山口 “doya” 智史